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東京高等裁判所 平成3年(行コ)85号 判決

控訴人 八重洲リハビリ株式会社

右代表者清算人 溝呂木商太郎

右訴訟代理人弁護士 柴田政雄

同 山口宏

被控訴人 日本橋税務署長 池田弘

右指定代理人 若狭勝 外三名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

(申立て)

控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人の昭和六〇年一一月三〇日から昭和六一年八月三一日までの清算中の事業年度に係る法人税について平成元年五月三一日付けでした無申告加算税の賦課決定を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

(主張)

当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」と同一であるから、これを引用する。

1  原判決二枚目裏二行目の「六三条一項」を削り、同三行目の「以下同じ。)」の次に「六三条一項」を加え、同三枚目表七行目の「申告書を提出した」を「申告をした」と改め、同行の「申告は、」の次に「当該」を加え、同裏五行目の「六六条一項」を削り、同六行目の「以下同じ。)」の次に「六六条一項」を、同四枚目裏六行目の「一般部分」の次に「に係る債権」を加え、同八行目の「最判」を「最高裁」と改め、同行の「二一日」の次に「判決・」を加え、同一〇行目の次に行を改めて、次のとおり加える。

「また、右予納法人税の一般部分に係る債権は、劣後的破産債権にも当たらないというべきである。破産法四六条四号が、劣後的破産債権として規定している罰金、科料は、本来本人に対する懲罰を目的とする性格を有するから、他の破産債権より劣後的に取り扱うこととされているものであり、予納法人税の一般部分とはその性格を全く異にし、租税法律主義の原則からも、租税法の規定を類推ないし拡張解釈することは許されない。破産管財人は、予納法人税の一般部分に係る債権を劣後的破産債権としても弁済することはできず、したがって、その納付義務を負うものではない。」

2  原判決五枚目表末行の次に行を改めて、次のとおり加える。

「仮に、予納法人税の一般部分に係る債権が劣後的破産債権に当たるとしても、破産管財人は配当手続によらなければ弁済できないのに、現実に納付義務の履行ができるか否かにかかわりなく、無申告に対する制裁としての加算税を課する本件賦課決定は、租税の実質主義の条理にも反し違法である。」

3  原判決七枚目表六行目の「できなかった」の次に「のである」を加え、同七行目の「ことは」を「ことによって」と、同八枚目表一行目の「処分」を「決定」と、同九行目の「なかった」を「ないこととする」と改め、同九枚目表五行目の「申告」の次に「、」を加え、同八行目の「最判」を「最高裁判所」と改め、同行の「二一日」の次に「判決」を加え、同裏五行目の「存しない」から同七行目までを「存せず、破産法人は破産財団の主体であるほかは何らの権利義務の主体とはなり得ないのであるから、予納法人税の一般部分に係る債権も破産財団に帰属し、破産法四六条四号に準ずる劣後的破産債権に当たるものと解される。」と改め、同一〇枚目表六行目の「制度」の次に「の」を、同裏二行目の「一般部分」の次に「に係る債権」を加え、同一一枚目表二行目の次に行を改めて、次のとおり加える。

「控訴人は、永井管財人が本件予納法人税の申告をしたとしても、破産法上、その納付はできなかったのであるから、本件予納法人税の申告をしなかったことによって客観的に国庫に対して何らの損害を与えていない旨主張するが、本件の場合、清算結了後まで申告納税制度に基づく本件予納法人税額の確定ができず、また、本件予納法人税のうち少なくとも清算確定法人税相当額については本来納付されるべき金員であったことからすれば、国庫に損害が生じているというべきである。」

4  原判決一一枚目裏末行の次に行を改めて、次のとおり加える。

「三 証拠関係〈省略〉」

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がなく、棄却すべきものと判断する。その争点に対する判断は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決「事実及び理由」中の「第三 争点に対する判断」の説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一二枚目四行目、同五行目の各「課され」を「課せられ」と改め、同七行目の「継続し」の次の「た場合」を削り、同八行目の「課すことをしないもの」と「課さないこと」と、同一〇行目から同裏二行目の「計算されるときは」までを「解散していない内国普通法人等の所得とみなして計算した場合における当該事業年度の課税標準である所得金額について、法人税法第二編第一章第二節の規定を適用するものとした場合に計算される法人税の金額があるときは」と改め、同五行目、同一三枚目表一〇行目から同末行にかけての各「予納として」の次に「納付されたものとして」を、同裏六行目の「制度」の次に「の」を加え、同行の「もととなる」を「基になる」と、同八行目の「解散した法人が再度」を「他方解散した法人が再び」と改め、同九行目の「場合等に」の次に「、」を、同一四枚目表一行目の冒頭に「法人の破産は法人の解散事由であり、破産は一種の清算手続であるが、」を、同六行目の「自由財産」の前に「破産法人には」を、同七行目の「破産財団の」の前に「破産法人は」を加え、同一〇行目の「及び納付義務」を削り、同裏三行目の「最判」を「最高裁」と改め、同行の「二一日」の次に「判決」を加え、同四行目の「予納法人税の」を「予納法人税に係る」と、同一五枚目表一行目の「債務」を「債権」と、同二行目の「過ぎない」を「とどまる」と改め、同裏三行目の「一般部分」の次に「に係る債権」を加え、同八行目の「負うこととなる」を「負うものと解される」と、同末行の「一見不合理な結果と」を「ことに」と、同一六枚目表一行目の「まれにはあり」を「まれにはあることであり」と、同五行目の「ない」を「ないのである」と改める。

2  原判決一六枚目表七行目の次に行を改めて、次のとおり加える。

「控訴人は、予納法人税の一般部分に係る債権が劣後的破産債権に当たるとしても、破産管財人は配当手続によらなければ弁済できないのに、現実に納付義務の履行ができるか否かにかかわりなく、無申告に対する制裁としての加算税を課する本件賦課決定は、租税の実質主義の条理にも反し違法である旨主張する。しかし、本件賦課決定は、予納法人税の申告書の提出が期限内にされなかったことに対する処分であり、前記のとり、申告により予納法人税の確定を経ておくことは本来賦課されるべき法人税の徴税権確保の観点からすれば意味がないとはいえず、また、後記のとおり、本件予納法人税の申告がなされなかったことにより国庫に損害を与えていないとはいえないのであるから、破産手続上、現実の納付義務の履行期の到来が不明であったとしても、本件賦課決定が租税の実質主義に反するとはいえず、控訴人の右主張も理由がない。

3  原判決一六枚目裏一行目から同二行目にかけて及び同一七枚目表三行目の「申告ができなかった」を「申告をしなかった」と、同二行目から同三行目にかけての「過ぎない」を「すぎない」と改め、同五行目の次に行を改めて、次のとおり加える。

「なお、控訴人は、永井管財人が、本件予納法人税の申告をしたとしても、破産法上その納付は履行できなかったのであるから、本件予納法人税の申告をしなかったことによって客観的に国庫に対して何らの損害も与えていない旨主張する。しかし、本件の場合、永井管財人が本件予納法人税の申告をしていたとすれば、被控訴人は、右管財人に対して、本件予納法人税に係る債権について破産債権としての届出をすることが可能であったのであり、また、破産手続が終結するまでに、本件予納法人税に係る債権について前余財産から配当を受けられたはずであることを考慮すると、本件予納法人税の申告をしなかったことが国庫に損害を与えていないとはいえないから、控訴人の右主張は理由がない。」

二  以上の次第により、原判決は正当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 菊池信男 裁判官 新城雅夫 裁判官 奥田隆文)

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